自然林に囲まれた 島根半島 出雲の国 目のやくし 一畑薬師(いちばたやくし )

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 普陀山(ふださん)

【20060317山陰中央新報/教えの庭から】
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(飯塚大幸/一畑薬師管長)

 ちょうどこの記事が掲載されている今日、私は中国の普陀山(ふださん)にいます。

 普陀山は、上海の沖、大小さまざまな舟山(しゅうざん)群島にある島です。普陀山というと山岳のように聞こえますが、南海に浮かぶ風光明媚(めいび)な島です。中国仏教四大聖地のひとつに数えられ、十二平方キロの面積に、百を超える寺、人口は 五千人(内千人は僧侶)、そして毎年二百八十万人を超える人が訪れます。島周辺は、海鮮天国といわれるほど豊かな漁場であり、観光リゾートエリアとしても有名になりました。しかし何といっても、普陀山は古くからの観音信仰の聖地として特別なところです。

 普陀山にはおよそ千百段の石段があり、近年、石段をコースの一部にしたマラソン大会が開かれています。(ピンとくる方もあると思いますが)一畑薬師の石段マラソンとまったく同じです。実は平田の市民有志の働きかけで、一畑薬師マラソンに習い、三年前から普陀山でも石段マラソンが始められ、お互いに選手を派遣し合うようになりました。

 今年も、優勝ランナーを含む選手の皆さんとともに来ています。日本の選手はここでも優勝するなど大活躍です。何よりも選手同士に友情が芽生え、両地域の交流の輪が確実に深まっている喜びを感じています。温かい交流です。

 そもそも普陀山の歴史には、日本人が関わっています。西暦八五八年、遣唐使の時代。留学僧・慧鍔(えがく)が五台山から観音像を伝えるため、今の寧波から船で帰国しようとしたとき。普陀山にさしかかると、白波立てて海面に鉄の蓮が何百と湧き出し、船は通れなくなりました。船長はじめ全員が恐れおののき、「観音像が海を渡る機縁まだ熟していないのならば、どうぞこの島にお留まり下さい」と祈ると、船はすぐに動けるようになったといいます。

 島の人々はこの成り行きを見て大変感激し、家を提供し、ともに信仰し、仏寺が建立されました。その後、各代の皇帝により寺院建立の寄進が続き、中国の仏教聖地になりました。因みに、本尊の観音像は、不肯去(ふこうきょ)観音といわれます。つまり「日本に行かなかった観音」という意味です。

 それから千百年。日本の中国地方に、観音様のご縁で集まった三十七の寺院でつくる「中国観音霊場」があります。十五年前、私たち霊場会が初めてこの普陀山を訪れたとき、熱烈なる歓迎を受けました。九十を超えた、ときの住職が、「千年の時空を超えて、はるばる日本から観音様をお迎えに来て下さった」と喜ばれたと聞きます。向こうの不肯去観音像を持って帰るわけにはいかないので、代わりに三十七体の観音像が私たちの各寺に納められました。

 私は、初めて普陀山の朝のおつとめに出たときの感動を、今でも鮮明に思い起こします。ふと耳に触れる読経の調べ。何とも懐かしい不思議な旋律です。思わず私の口も動きました。同じお経です。発する音は異なるも、見事に唱和されています。私は禅宗の僧侶。普陀山も禅の系統です。禅が日本に伝えられたのは鎌倉時代。ゆうに数百年が経っています。僧俗何百人とも知れぬ、未明の大きなお堂に響く声。私たちにとってお経は聖なる言葉。本当に鳥肌が立ちました。

 その普陀山。また参ります。今年六月二十三日〜二十九日、大きな豪華客船をチャーターし、総勢四百人で訪問する旅が予定されています。最後に少し宣伝となりますが、是非ご一緒にいかがでしょうか。

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