謹賀新年(令和3年 2021)
更新日:2021.01.01
年頭法話 「且坐」 (しゃざ)
~ちょっと坐りなさい~
新年おめでとうございます。今年は丑年です。丑とは「紐がからむ」の意、植物でいうと「芽が種子の中にあってまだ伸びることができない」ときだそうです。丑の刻は午前2時頃、草木も眠り、魔物が出やすいとも言われます。
牛は草を食べるときしっかりと反芻しますね。丑年の人は何事も納得がいくまでじっくり考えて、ひとたび意思が決まると他人の意見に惑わされずに自分のペースで突き進む、努力家でマイペースな人が多いそうです。
仏教の生まれたインドでは、牛は聖なる動物です。禅の世界では、人が悟りにいたる十の段階を絵で描いた「十牛図」はとても有名です。牛は普段はおとなしいですが、あばれると手がつけられなくなり、まるで人の心に似ているところから、自分の本当の心を探すお話しが説かれています。
今年の色紙には「且坐」と書きました。「ちょっと坐りなさい」という意味です。臨済宗の祖である臨済禅師の言行をまとめた『臨済録』の中の言葉です。
「ちょっと坐って落ち着いてごらん」つまり「自分の心を見つめなさい」 あわただしく自分を見失っているときに有り難いひと言です。原文では「且坐」のあと「喫茶」(お茶でも飲みなさい)と続きます。さらに親切に「自分が持っている清らかに輝く本当の心(仏心)に気づきなさい」という深いメッセージです。丑年に因み「坐禅」はいかがでしょうか。
一畑薬師管長 飯塚大幸
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【色紙】 揮毫:飯塚大幸 管長 / 画:飯塚月真