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謹賀新年 令和5年2023

更新日:2023.01.01

年頭法話 「真心」(まごころ)

 ~自らの内に仏心を見る~

 

新年おめでとうございます。今年は干支の4番目の卯年です。兎はおだやかな性質なので「温厚」、よく跳びはねるので「飛躍」の意があります。植物では「成長」を表します。平和で飛躍の一年となりますよう念じるばかりです。

お釈迦さまの前世の逸話を集めた『ジャータカ物語』に「月の兎」の話があります。皆さんもよくご存じの、兎は月で餅をついている、月の影が兎の姿をしている、その由縁となったお話です。

「あるとき菩薩は兎に生まれ変わりました。自分だけ良ければいいのではなくて、他人のことも心配するべきという布施の心が説かれました。帝釈天(インドの雷神)が老人の姿になって施しを求めました。兎の友人たち(サル、キツネ、カワウソ)は自分たちの食べ物を施しました。しかし、草しか食べない兎には何も施すものがありません。自分の無力を嘆いた兎は、自らを食として捧げようと火の中に飛び込みました。ところが火は涼しく、その老人が帝釈天であったことを知ります。兎の慈悲に感銘を受けた帝釈天は、兎を月にあげました。」

真心とは、兎のような、やさしい純真無垢な心です。それは、生まれながらにすべての人がいただいている心であり、仏心といってよいでしょう。しかし、ときに自己中心的な思い込みや迷いにより、私たちの心は塵や垢に覆われ、本来の輝きを見失うことしきりです。自らの内に仏心を見る、これを信じて明らめるのが仏の道です。おかげさまの心、感謝の心で毎日を過ごしたいものです。安らかな年でありますように。

一畑薬師管長 飯塚大幸

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【色紙】 揮毫:飯塚大幸 管長 / 画:飯塚月真