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6月の言葉「最近よく聞くエビデンス」

更新日:2025.06.01

皆様こんにちは。管長(住職)の飯塚大幸です。季節の移ろいを感じますね。
現代は「科学的であること」が大事にされる時代です。資料や数字で説明ができる、同じ結果が出る、専門家の知見がある、そうした誰にでも証明される「エビデンス(確かな根拠)」が価値を持ちます。それはとても大切なことです。ですが、もうひとつの問いかけがあります。「あなたはそれで本当に幸せですか?」「誰かに見せるためのものではなく、幸せはあなたの心の奥から湧いていますか?」

 仏教は、本当の幸せは、自分のいのちをまっすぐに感じる時間の中にあると説いています。たとえば ~ 朝、静かな光に手を合わせたとき。風がそっと肌をなで、鳥の声が聞こえてくるとき。一杯のお茶を、心から味わったとき。読書をしているとき ~ そこに、誰かに説明するための資料も数字もありません。けれど、そこには確かにあるのです。「ああ、いま、生きている」としか言えないような、静かで満ち足りた幸せです。

これは、他人の評価ではなく、自分の中からにじみ出るほんとうの幸せです。科学は、外の世界のしくみや法則を探り、理解しようとします。仏教は、自分の内側にある幸せのありかを見つけようとする教えです。どちらも、人間がよりよく生きるための大切な道です。ともに同じ方を向いている真面目な道だと思います。

静かに、今というこの瞬間を丁寧に生きてみます。自分の心の声に耳をすませてみる。そこには、他の誰にも見えないけれど、自分自身だけが確かに知っている安らぎがあるはずです。この季節を味わってみてください。

令和7年(2025)6月1日